第16回 小樽人と年末年始の映画

 さて、ほとんど日常的にお芝居や映画を楽しむ機会に恵まれていた小樽の市井人ですが、年末年始と言えば、また一段と気分が上がったものです。かつて、芝居興行の世界では〝この時期といえばこれ!〟というような定番の演目があり、小樽の人々も、それを心から楽しみに待ちわびていました。
 例えば、12月になると〈忠臣蔵〉。これは皆さん、ご存じですね? 有名な赤穂浪士討ち入りの日が、元禄15年(1702)の12月14日だったことから、それに因んだ上演が行われるようになりました。現在でも歌舞伎座では、12月に通し狂言の「仮名手本忠臣蔵」を毎年掛けていますし、一方テレビ界でも、平成半ば頃までは〝年末(時には年始)は忠臣蔵の特番ドラマで決まり〟というムードが当たり前のように残っていました。現在は、それもかなり薄れていますが。
 越後久左ヱ門さんのご子息・久司さんによると、子供の頃(昭和10年代前後)は、年の瀬に「忠臣蔵」の映画が掛かるのが、ことのほか楽しみだったそうです。

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